元出版社編集長の視点。ベストセラーを生み出してきた名プロデューサーに聞くブランディング出版の魅力!
出版はご自身の人生やオリジナルのノウハウ、または企業の理念や歩みなどを本にすることで、世間に広く認知してもらうマーケティング手段の一つです。
商業出版は出版社主導で進んでいくためハードルは高いですが、ブランディング出版は自己資金で出版することで思いのまま本にまとめられます。
進行もスピーディーに進められることからビジネスチャンスを逃しません。
今回は、本を出すことの魅力やメリットをもっと知っていただくため、元出版社編集長、スタックアップ取締役プロデューサーの平田静子に直接聞いていくインタビューです!
自身が代表取締役を務めるヒラタワークス株式会社でも出版やイベントを手掛け、女性の人間力を育む「おしず塾」も運営。
どのような視点で出版の企画が閃くのか。
本によってどのような人々の人生が変わってきたのかなど。
出版にご興味がおありの方々に届いてほしい記事です!
■平田静子 経歴
1969年 株式会社フジテレビジョン入社。
1984年株式会社扶桑社へ出向。
宣伝部にてPR活動。その後書籍編集部 編集長。
テレビ本・ラジオ本など、フジサンケイグループとの連動本を企画し、「アメリカインディアンの教え」「ビストロスマップ」などベストセラーを生み出す。
また福田和子(松山ホステス殺害事件)自身による手記「涙の谷」を出版し話題となる。
1994年 雑誌CAZ編集長、1998年書籍編集部部長、上記を経て、同社執行役員、取締役、常務取締役などを歴任。
2000年「チーズはどこに消えた?」を出版プロデュース。販売累計430万部の大ヒット作となる。
「新しい歴史教科書をつくる会」に同社代表として参加し、中学の歴史と公民の教科書全般に携わる。「日経ウーマン」主催による、ウーマン・オブ・ザ・イヤーの部門賞受賞。
秋元康著「象の背中」の出版プロデュースと共に、2007年公開映画「象の背中」(松竹配給)のエグゼクティブプロデューサーも務める。
2010年 株式会社扶桑社を退職。同年、4月にプロデュース会社・ヒラタワークス(株)を設立。
2015年7月 自著「そういえば、いつも目の前のことだけやってきた」(マガジンハウス刊)出版。講演活動も展開。
2016年7月 株式会社サニーサイドアップキャリア(人材ビジネス)の代表取締役社長に就任、2020年6月退任。
2020年2月 明治大学評議員に就任。
2021年3月 株式会社アマナ 社外取締役に就任
(参照:ヒラタワークス株式会社 https://hirataworks.jp/about/)
今回は、スタックアップがご提案可能なプロモーション手法についてご紹介します。
プロデュースしてきた本のジャンル
(平田)扶桑社に勤めていたころを含めると、ジャンルを問わずたくさんの本の制作を手掛けてきました。
著名人では秋元康さんの「象の背中」を始め、タレントさんの写真集、芸人さん、俳優さんのエッセイなんかも数多く作りました。
社会的なものでは松山ホステス殺人事件の被告人が、拘置所内で綴った手記「涙の谷―私の逃亡、十四年と十一カ月十日」など。
好きな分野は?とよく聞かれるのですが、特にありません。「目の前にあることをちゃんとやろう」という信条で生きてきているので、いつも今手掛けている本が大好きなんです。
それがタレントさんの本ならばそれに夢中だし、ビジネス本ならば、なるほど面白いと色々と考えさせられる。
政治家の方の本に携われば「こんな思想の政治家がいるんだ。これによって世界が変わるといいなあ」と思ったり。
だからどんな本にも、好き嫌いは無いんです。
本の企画は、どのように生まれるのか
新たな本の企画については、ケースバイケースです。
これは、出版社に勤めていた頃と、出版プロデューサーとしての立場でもちろん変わりますが、筆者の方から「こんな本を出版したいんだ」と企画を持ち込まれることもあれば、私が「今この人がこんな本を出したら、多くの人が手に取るのではないか」という閃きからオファーするケースと両方あります。
編集者の立場から本を出版して欲しい著者を探す時は、今世の中で問題になっていたり、注目されていることをテーマにして、誰に書いてもらったら面白いか、世間が読みたくなるかと、組み合わせを考えるんです。
それで、この人だ!という適任の人物を見つけたら、すぐに話をしに伺います。
会うのが大変な人、全く伝手が無いこともありますが、自分がこの人の本を作りたい!と思ったら、出来る限りの努力をして可能性を見つけていきます。
どうやったらその著者に辿り着けるのか、知り合いを頼ったりとにかくやり方はいくらでもあるから、諦めなければ繋がっていきます。
正面から執筆依頼をしたエピソード
今現在手掛けている本のテーマは「アンコンシャスバイアス」。
いわゆるみんなの「思い込み」についての本です。
これは、オリンピックの委員長をやられていた森元総理が「女性の会議は長い」と公の場で発言して問題になったのがきっかけでした。
ジェンダーの問題も含めて、これから先、より社会的な大きな課題になっていくと思って、これを世に発信した方がいいと考えたんです。
このアンコンシャスバイアスについて『女性の品格』という本で大ベストセラーになった昭和女子大学の総長の坂東眞理子さんの視点で書いてもらったら、親和性もあって面白いんじゃないか。
そう思って、直接連絡をしたんです。
「良いじゃない、やるわよ」と言って下さって。今その準備をしているところです。
こういう本が世に必要だと思うんです!という熱意を伝えることですね。
本づくりに必要な「絶対条件」
まずは「その本を通じて何を伝えたいのか」が明確であること。それから出版後の影響も考えなければなりません。
この本によって社会にどのような影響を与えるのか、あるいは与えたいのか。つまり、テーマがないと本にはならないということです。
テーマがはっきりしないままだとなかなか売れないでしょうね。そういう本が生まれてしまうと誰にとっても幸せじゃない。
著者にとっても、出版社にとっても、本屋さんにとっても。
それに、社会にとっても良くない。
必要とされないものにエネルギーや資源を使うわけですから。
SDGsとかESG志向とか、企業も色々と考えないといけないでしょう?食品ロスがあるように、「書物のロス」というのも存在します。
売れなかった本は最終的には断裁処理をされて、リサイクルされるか焼却されます。どちらにしても紙のロスとなってしまいます。
そのため、社会が求めているテーマであるか、もしくはどうしたらそういうテーマとして見せられるかを吟味し考え抜くんです。
ブランディング出版を最も勧めたいのは、どんな企業か。
せっかく良い会社を経営されているのに認知されていない企業。あるいは、経営者がすごく立派な方なのに誰も知らないなど。非常にもったいないと思います。
経営のノウハウも持っていて、素晴らしい会社経営をしている方には、それを自分だけのものにしないで世の中の人にも教えてあげてほしいなと思うのです。
経営者になりたいと考えている方には大いに参考になるでしょうし、社会人の方が示唆を得るきっかけになる。
人より多くの経験を乗り越えてきているはずですので、伝えられることは沢山あるのではないでしょうか。
ですので企業や経営者の方にはぜひそれらを、本といういつでも振り返ることができる媒体に残しておいてほしいと思います。
この時代でも紙の本で出版する意味
たとえば動画やWeb媒体などでは過去のコンテンツは流れていってしまいます。
アーカイブされることもありますが何回も見たいと思うと、見たいところだけを見返すのは少し大変だったり。
一方で書籍は、手元に置いておけば、24時間いつでも今見たいところを見られます。
あるいは、10年後にふと読み返したいと思った時に、本はいつでもすぐにアクセスができます。
本は携帯できるメディアとしても、実は優れていると私は思っているんです。鞄に入れて持ち歩く、好きな時にどこでも読める。
それと、最もすごいなと感じるのは読むのに電池も電気も必要ないということ。
今は便利にスマートフォンで何でもアクセスできますけど、電池がなくなると読めなくなる。
本は夜でもロウソクの明かりひとつで読むことができる。
災害が起きて電気が使えないなんて時にも、少しの明かりがあれば、そして傍らに本があれば不安で寂しい気持ちを落ち着かせることができる。
それから、「電子で見る文字」と「紙で見る文字」は記憶の残り方が違うように感じます。
科学的な話はわかりませんが、白色ライトで見る活字と、紙で見るのはなぜか頭への入り方が違うように、私は感じるんですよね。
私は、本は未来永劫、存在し続けると思っていますよ。
印象に残っている出版プロデュース
比較的最近の事例からお話しますと、珍しく絵本を作りまして、それは印象に残っています。
私自身、あまり絵本の出版はプロデュース経験がありませんでした。
絵本には独特の流通があるのと、目利きが求められるので実はほとんどやってこなかったんです。
先日手掛けた絵本は、一般社団法人自然栽培協会というところからのオファーで、作者は小渕元首相のお子さん、小渕暁子さんというイラストレーターの方です。
優しいイラストに、温かみのある文章を添えてくれました。
この本の原案は、元々はナグモクリニックの南雲吉則先生が食育について書いたものでした。
そこに彼女の文章とイラストが合わさって、自然栽培協会が考えるような地球にやさしい、ESG思考にぴったりな内容。
でも決して押しつけがましくない素晴らしい絵本が出来ました。
手掛けてきた全ての本に対して多くの人に読んでもらいたいと願っていますが、これも現代の課題に非常にマッチした内容ですのでぜひ見てもらいたいと思います。
出版によって人生が変わった話
「社内プレゼンの資料作成術」で有名な前田鎌利さん
ある日、前田鎌利さんという書道家の方が私のところに来て、「書道の本を作りたい」と相談を受けました。
前田さんは当時書道家として活動しながら、ソフトバンクアカデミアという孫正義さんが創設した事業家養成プログラムを受講されている生徒さんでもありました。
詳しくお話を伺うと、孫さんが使うプレゼン資料も作成していて、一発でOKをもらうなど、とても優秀な方だったんです。
そのお話を知人のダイヤモンド社の編集者に伝えたところ、面白いから是非ウチで出版したい!となり、社内プレゼンの資料をどうやって作るのか、そのノウハウをテーマにして商業出版の企画で採用されました。
この本をご存知の方は多いと思いますが、とても評判が良くものすごく売れたんです!
それから第二弾、第三弾と出版オファーもあり、今では社内プレゼンのエキスパートとして知られる存在になられましたね。
NewsPicksなどでも講師としてご活躍されていて、全国からの講演依頼が殺到していると伺いました。
出版を機に、きっとその当時ご本人が抱いていた想像以上に活躍できるフィールドが開いた。
大層なことは言えませんが、もしかすると人生を変える少しのきっかけにはなれたのかも知れません。
出版プロデュースで最初にするのは、本人が気付いていない強みですとか、本心、根っこの部分に気付いてもらうことです。
ヒアリングで深堀りする過程で、ご本人も「あ、自分はこういったことが得意なんだ」「あれ?これは他人から見ると強みに映るのですか?」と気付いていく。
その発見を積み上げて、ご本人にとっても新しい選択が生まれ、本の企画がどんどん尖っていくんです。
すごい会議で有名な大橋禅太郎さん
扶桑社に勤めていた頃のお話です。
『すごい会議』というコーチングを提供する大橋禅太郎さんという方が、飛び込みで私のところに電話を掛けてこられました。
「僕、面白いメソッドを持っているんです。その本を出したいので会ってもらえませんか」と。
話を聞いて、当時私は編集長という立場でしたから、商業出版の話としてすぐに進められたんです。
その時にはまだそのメソッドをすごい会議とは呼んでいなくて、「すごいやり方」と言っていたんです。
だから私が作った彼の最初の本のタイトルはそのまま『すごいやり方』に決まって。
その後会社の名前も「すごい会議」に変更し、他の出版社からも沢山そのメソッドに関する本が出版されるようになっていきましたね。
今では全国的にサービスが知れ渡っていますよね。
独特なパラパラ漫画で有名な鉄拳さん
もう一つ、鉄拳さんというお笑い芸人さんも、出版時にはまだあまり知られていませんでしたね。
ある日私の部下が「鉄拳っていう面白い芸人さんがいるんです」と紹介されて。
彼の芸風ってイラストを描いてパラパラ漫画でコントをするんですね。
それがすごく本と相性が良いからやりたい!って部下が熱心に言ってくるんですね。(笑)
そこまで言うならやってみたら?と鉄拳さんに扶桑社にお越しいただいて、初めて会った時もテレビで見たままの白塗りでいらっしゃいましたね。 (笑)
彼の本も非常によく売れたので、表紙を見れば書店に置いてあったことを思い出す方もいらっしゃるのではないかと思います。
編集者のクレイジーさと、情熱が本を売る
最近の商業出版は、もうすでに有名だったりSNSのフォロワーが多い人を選んで出版オファーを掛けています。それが基準になりつつある。
昔は違ったんですよ。
私たち編集者が、とにかく純粋に面白いと思った人の本を出していたんです。
その時の私たちのスローガンは「クレイジーさと情熱」でした。編集者のクレイジーさと、情熱が本を売るんだよねって。
私が責任を持って本を出すんだ!売るんだ!という熱意、意地。そういう本が実際に売れていくところをいくつも見てきました。
一番好きな本
一番好きな本…。その質問はよく受けるんですが、とっても難しいですね。
一冊挙げるとするならば先ほどもお話の中に出た、小渕暁子さんが書いた『父のぬくもり』。
自分が出版プロデュースを手掛けた作品なので、自薦するようであまり言わないんです…。
この本の文章が素敵なんですよ。
お父様がどういう総理だったか。親としてはどういう父親だったのか。
一人の男性としてどんな人間だったのかがよく伝わってくるんです。
この本が本当に大好きで、度々読み返しています。
私は本というのは心の栄養剤だと思っていて、読書によって感性が磨かれていきます。
現代人にとっては贅沢でとても貴重な時間ですね。
疲れていたりすると人は徐々に感情のコントロールを失っていきますが、時には落ち着いて本に向かって、思いやりや優しさ、希望をチャージしていただきたいです。
小渕暁子さんの本は、そんな時にふと手にとってしまう一冊です。
次のベストセラーを生み出したい!
私の強い願望…
以前スタックアップの行った出版セミナーのタイトルにも「無名の著者を発掘したい」と付けたように、新たなベストセラーを生み出したいですね。
理想は「あの本をプロデュースした人」ではなく「あの人を世に出した人!」って言われたい。
「〇〇さんを発掘した人ですよね!?」って。
ですので皆さんぜひ出版にチャレンジしていただきたいと思います!
▽こちらからもお問い合わせいただけます▽