”超大物出版プロデューサー”、平田静子の半生とその企画力に迫る。〜雑誌CAZが売れた理由と「売れる本」の共通点〜
株式会社スタックアップコラム編集部です。
弊社は、本の企画〜販売戦略までをプランニングする「出版企画・出版総合プロデュース」の会社です。
さて、この記事でも弊社の取締役プロデューサーである平田静子に迫るインタビューを追いかけます。
業界の常識を覆し、編集長を務める雑誌の売上を伸ばしていった彼女。
そのアイディアや企画は一体どこから来るのでしょうか。
編集会議で考えること
イ:前回お話を伺った雑誌「CAZ」では、人がびっくりするような、それまでの情報誌にはなかった物の見せ方・伝え方で人気雑誌へと導いたということでしたが、その根本の企画はどうやって生まれていたのでしょうか。
平田:もちろん決まって編集会議がありましたが、そこでは発売する当日の◯月◯日をいつもイメージしていました。
この日は暑いのか寒いのか、雨なのか晴れなのか。気象庁に天気予報を聞いて、それによって企画を考えていました。それから給料日の後か前かも大事ですよね。
ペルソナも作っていましたよ。CAZを読む女の子たちはどういう子達だろうね?と。
「大体23歳〜26歳、まだ結婚はしていなくて寮生活はせずに、お家から職場に通っている女性」だと想定して、その人達に向けていつも企画を考えていました。
イ:一番記憶に残っている企画はどんなものですか?
平田:あ!いい男特集というのをやりましたね!今で言うイケメン!
編集部の友達でも何でも、いい男風だと思われる人物を連れて来てくださいという企画です(笑)
まだイケメンという言葉もなかった時代。それはちょっと珍しいかもしれないですね、情報誌なのにね。何の情報だいって!(笑)
基本的にCAZでは旅行、モノ、食べ物、その季節のフルーツやクリスマスイベントなどもよく特集していましたね。食べ物の特集はスタッフ陣は嫌になるまで食べ歩きさせられるから、もう見たくないですってよく言ってましたね(笑)
大福は付いている豆の数まで数えていました。どこどこのお店の大福は豆が10個付いていますとか。
イ:本当に感心させられます。甘味好きは絶対に知りたい情報ですよね!
平田:そう。そういう特集の仕方。今考えると面白いわね!
イ:当時CAZはどのくらい売れていたのですか?
平田:調子が良いときは15万部くらいですかね。
イ:2週間で!それは驚きですが、やっぱり人への伝え方が興味深くて面白いからなんだろうと想像できました。インタビュアーとしても参考になります。
CAZの編集長から書籍部長に
平田:CAZの後は雑誌部長を経て、書籍部長として単行本の部署に戻りました。
またそこでも一般書をやりながら、全く携わったことのない「教科書」の責任者になったりと色々ありましたが、中でも文芸雑誌を立ち上げたのは思い出深いです。
出版社にもそれぞれ特長があって、得意不得意があります。
文芸なら文芸でそのジャンルの実績がなければ、著名な作家さんや著者さんから出してもらうことってなかなか難しいんですよ。
それまで扶桑社はエンタメに強い出版社で文芸を扱う受け皿がなく、総合出版社になるためには絶対にそれが必要だと思ったんです。
それで創立したのが「en-taxi」という同人誌でした。
福田和也さん、柳美里さん、リリー・フランキーさん、坪内祐三さんの同人誌にして、彼らが編集委員として一緒に会議し、彼らの作家仲間にも書いてもらうという雑誌です。
リリー・フランキーさんの「東京タワー」は実はen-taxiで連載が始まったんです。
その立ち上げ後、また部署移動になり今のスタックアップのような「カスタム出版部」という自費出版のプロデュース部門をつくって、62歳のときに定年退職に至ったというわけです。
定年後の翌日に会社設立
イ:運命の定めのように常に新しい事業に挑戦していく静子さん、輝かしいです。ファンが増える理由がわかりました。そしてここから、ご自身の会社を設立されるお話になるわけですね!
平田:そう。8年前。
定年退職してからちょっと休もうかしらなんて言っていたら、親交のある秋元康さんに
「このスピード重視な時代に2、3ヶ月休んでごらん。すぐに忘れられるよ。戻ってくる場所が無くなるからそんなことはやめた方がいいね。」って言われたのよ。(笑)
それはすごく覚えてる。
あ、そうかと!遊んでる場合じゃないのね!(笑)ということで退職した翌日に、何をするか決めずに会社を登記しました。
当初は、出版以外のことをやってみたいという気持ちがあって、マンション建設のプロジェクトに入ってみたり、タレントとの交渉・キャスティングをしてみたりしたんだけれど、やっぱり出版の相談が絶えず来るし、他のことやってみたら私にできることはこれしかないなということがよくわかりました。
それから、また出版プロデュースの仕事に戻ってきました。
出版プロデュースの仕事について
イ:ここからは少し一問一答のようになってしまいますが、プロデュースの依頼は全て受けていらっしゃるわけではありませんよね?
平田:原稿をいただいて、読んで出さなかったというケースはあります。
イ:それはどのような場合ですか?
平田:当然売るのは難しいだろうなというとき。その判断基準は「世の中に必用かどうか」。
世の人々にこれを読んでもらう意義があるかということが一番大きい要素です。
みんなに広めたいかどうか。
イ:そこで著者のバックグラウンドなどは大事なことですか?
平田:大事なケースとそうじゃないケースがあります。
その人自身の人間性が素晴らしいのか、その人が創り出すものが素晴らしいのかでフォーカスするポイントが違います。
イ:ではちょっと質問を変えて、売れる本の共通点を挙げるとしたら何ですか?
平田:ない!そんなものないわ。
あったら必ずそのセオリーをやるもの。(笑)
幻冬舎の人と会話をしたことがあった。
「人ってよく売れる秘訣は何ですかってよく聞くよな〜。そんなものあるわけないじゃんな。」と。
それともう1つ、「何かあると、人はよく運がいいですねって言葉で片付けるけど違うよな。どんだけ俺たちが努力してるのかわかってねえんだよな。(笑)」という会話をしたのをよく覚えてます。その2つは私も同感。
平田:例えば、これが良いか悪いかは別として、今話題な人の本を出したら売れるに決まってる。
毎日のようにニュースに取り上げられている渦中の人物の過去とか、最期までプライベートを明かさなかった俳優や著名人の謎に包まれた人生とかね。
何かの真相って誰もが知りたがるでしょ。
そういう観点で”今”人が何に興味あるのかを考える。
夏の連日のこの猛暑はなぜ続くのか、でも良いと思う。(インタビュー時は真夏日でした。)
なんか気候がおかしくない?ってみんな言ってる。
イ:ということは気温でさえも静子さんにとっては本のネタになってしまう、というわけですね。
平田:うん。ネタの宝庫。今日を、今を考えるということですね。
特に間口の広いテーマは売れると思いますね。興味を持っている人口が多い題材。
あとは世の中で議論されているトピックとか、タイミングも大事ですね。
ありがとうございました!
次回、完結編となる記事では平田が世に広めたい!と強く感じた本について伺います!
その時、出版プロデューサーはどんなアクションを起こすのでしょうか。
どうぞお楽しみに。
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