驚異的な出版マーケティング事例①~「チーズはどこへ消えた?」

2020年1月08日

本の企画から販売戦略までをトータルプランニングする出版企画・出版総合プロデュース会社のスタックアップです。

 

皆さんは平田静子という女性をご存じでしょうか?

これまでも弊社ブログで何回も取り上げてきましたが、あらためてご紹介すると「数々のヒット作を世に送り出してきた敏腕出版プロデューサー」で弊社の取締役でもあります。

 

平田はフジテレビへ入社後、扶桑社へ出向し宣伝部にてパブリシティ担当を務めます。その後全くの未経験から20年もの間扶桑社の編集長を担い、その革新的なアイディアで書籍・雑誌から世に様々なブームを巻き起こしてきました。

 

女性は25歳で定年(退職)と言われていた時代から異例のキャリアで彼女にしか成せないネットワーク作りと出版企画の実績を積み重ね、定年を迎えた現在、自身の会社を立ち上げ弊社スタックアップでも取締役プロデューサーに就任。彼女に企画プロデュースを依頼したいという出版希望者は後を絶ちません。

 

今回は、彼女がこれまでに手掛けてきた数々のベストセラーについて、マーケティングという観点からヒットの秘密に迫って行きたいと思います。

 

寓話でありながら哲学的。「チーズはどこへ消えた?」そのころ日本で流行った“翻訳モノ”

 

「チーズはどこへ消えた?」が日本で発行されたのは2000年。原作はアメリカで2年前の1998年に既に発行されていました。その頃日本では「金持ち父さん貧乏父さん」「7つの習慣」などの啓蒙的な翻訳モノが流行っていて、平田自身も好奇心を掻き立てられたと言います。

 

寓話でありながら哲学的。そしてビジネスにも通じるものがある。その視点が魅力的に映り「私もファンタジー仕立ての翻訳モノを売り出したい!」と強く思うようになりました。

 

そんな時に知り合いの編集者が持ち込んだのが、後に大ヒットとなる「チーズはどこへ消えた?」の出版概要でした。この企画は最初他社に売り込んだけど断られ、その影響で版権料もかなり下がっていたそうです。平田はすぐにその話に飛びつき、扶桑社から出版することにしました。最初は2万部からのスタートでした。

 

上場企業100社の社長に「スピーチのヒントに」と本を謹呈

 

 

次に「どうやってこの本を売り出すか」と言ったマーケティングの話になりました。この本が出たのは11月末のこと。どうしようかと考えていたある日、当時の扶桑社の社長がボソッと言ったそうです。

 

「経営者は年末年始にスピーチをする機会が多いから、きっとネタに困っているんじゃないかな」

 

その時に平田は思いつきました。この本はその挨拶のネタに使えるんじゃないか、と。そこで企業の社長さんにこの本を送ろうという話になり、上場企業100社の社長さんに「この本がご挨拶のヒントになればと思います」という手紙を添えて贈呈をしたそうです。

 

偶然、当時のソニーの社長だった井出さんがこの本を読んでくださり、社内の全体会議でこの本に触れ「いい本だから、ぜひ読んでみるように」と話をしたとのこと。ソニーの社長さんが話すことに世界が注目していますから、その発言が新聞に取り上げられました。日本中の社長さんはソニーの社長さんが読んでいるのだから僕も読まないと、と瞬く間にビジネスマンの間でこの本がどんどん広がっていったというわけです。

 

インフルエンサーマーケティングの先駆け

 

口コミの効果がいかに絶大かということは、昨今のインフルエンサーマーケティングをみるとよくわかりますが「チーズはとこへ消えた?」が日本で発行されたのは2000年。Instagram(インスタグラム)もYouTube(ユーチューブ)もまだない時代です。その時代に、いち早く上場企業の社長=ビジネス界のインフルエンサーに着目したことは先見の明があるとしか言いようがありません。

 

結果、想像以上の売れ行きですぐに重版することになりました。通常、重版は2万部が平均なのですが、なんと20万部でした。その後も20万、30万と重版していったのです。その数字を聞いた時これを売り切ることができるのかとドキドキしたそうです。

 

帯を書き換え、さらに売り上げを伸ばす

 

 

何度も重版がされ、売り上げがどんどん伸びていくなか、会社はさらなる攻めをすることになります。それは本に付ける“帯”を臨機応変に書き換えること。

書店員から「ビジネス書として売り出しているのに、女性が買っていかれます」と聞けば、夫婦関係や育児に役立つ本であるということを帯に書き、新社会人がデビューする4月には社会人必読の本であると書くなど、その時の状況に応じて帯を書き換えました。そうやってどんどん購読者が広がっていったのです。この本はマーケティングが功を奏した1冊です。2万部のスタートから、現在では累計部数400万部を突破することになりました。

 

この話から、ベストセラーというものは内容の魅力によるものだけではなく、そのマーケティング戦略によっても成立していることがわかります。この本を一人でも多くの人に読んでもらいたい、この世界を知ってほしいという情熱がアイディアを生み、成果を上げる。ヒット作の裏にはたくさんの人の熱い想いが詰まっているのですね。