遺伝子を知るとその人がわかる。スタックアップの企画編集により『「運任せ」にしない子供の育て方』を上梓した陰山康成先生にお話を伺いました。

遺伝子を調べ、その人にあった最適な治療を行う

 

―この度上梓された『「運任せ」にしない子供の育て方』ですが、テーマは医療であり子育てという今までの先生の著書にはない試みですね。この本を出そうと思った経緯を教えていただけますか?

 

私が5年前から取り組んでいる新しい医療スタイルを広く伝えたかったという理由があります。私はクリニックで毎日患者さんと向かいあっている臨床医なのですが、医学の世界では毎日のように新しい論文が発表され、今まで常識とされていた医療の概念がガラッと変わってしまうほどの新しい発見もあります。

 

私が近年着目しているのは、遺伝子の分野です。今までは特定の病気や疾患に対しての最適な治療が画一的なものでした。どういうことかというと、個人個人の体の特性が異なるにも関わらず、一様に同じ治療がされていたということです。でもこれだと何だか違うぞということで、最適な治療をするためには、まず患者さんの体のことをきちんと知ろうとなったわけです。それが遺伝子です。遺伝子というのは本当に興味深く、まさにその人の人格や個性を形成している要因となっているものであり、それを知るといろいろな“わけ”がわかってきます。思考の傾向や得意不得意、好みなど何でもわかってきます。私は遺伝子検査をしてその人の特性に基づいた治療をやっているのですが、これがものすごく高い改善率を出しています。

 

子供がもともと持っている才能や個性を知り、それをいかに伸ばすか

 

私が勤務しているクリニックにはお子様も多く来院されます。クリニックは内科、皮膚科、歯科、そして精神科が受診可能なので、自閉症のような心の問題から、アトピーや喘息などの慢性疾患まで広く治療にあたっています。私は患者として訪れるお子様の遺伝子を調べてから最適な治療を行うので症状は著しく改善されています。こちらもある程度の確信を持って行っている治療スタイルなので、ここまでは想定内なのですよ。でも、治療後にお子様たちの成績が延びたり、運動能力が上がったりしている。この副産物は何なんだろうと思いました。それが本に書いた遺伝子と腸内フローラと密接に関係があったのです。

 

子供というのは本当に才能の宝庫で、一人一人が素晴らしい唯一無二の才能をもっている。でも、それを生かしきれていない。さらに言うと、親がそれを見つけられていないというのも事実です。子供の頭を良くしたい、スポーツで活躍させてあげたいというのは万国共通の親の願いかと思いますが、その最適な方法を指南してあげることが本書の狙いでもあります。もともと子供が持っている宝を輝かせてあげる本ですね。

 

医療に普遍的な正解はない。治療のトレンドは時代によって上書きされるもの

 

―医療なり子育てというのは、非常にデリケートな分野かと思います。このようなテーマで執筆するにあたって気をつけたことはありますか?

 

まず、断定的な言い方をしないということです。~すれば治る!とか、~のような場合にはこうするべきだ!とか、そういう表現をしないようにしました。それから、必ずエビデンスに基づいた話をするということ。医療や子育ての分野は、時代と共にトレンドがあり、常識も変わり、正解もどんどん更新されている。言ってしまえば常に可変的で普遍的な正解のない分野なのですよ。

 

体の中には60兆個の細胞、180兆個の微生物がいる!

 

昔は医療とはすなわち病原体との闘いでした。今と違って時代的に公衆衛生が整ってなかったので、疫病や伝染病が蔓延していたのです。それらをいかにやっつけるかが医療だったんですね。250年前に顕微鏡が発明され微生物を認識できる時代になってからは、まさにそれらを駆逐することが医療でした。病原体となる微生物は悪いもので、だからやっつけろという短絡的な考えです。抗生物質をばんばん投与して病原体をやっつける。確かにその治療方法で急性疾患は改善されました。しかし一方で、免疫疾患やアレルギー、慢性疾患などは増えてきています。現代に生きる人が抱える問題に対しては、抗生物質では対応しきれないのですよね。

 

そこで、やっつける治療ではなく、それらと共生する治療という考えが生まれてくるのです。そもそも人の体には60兆個の細胞があって、さらに180兆個の微生物が住み着いているわけです。とてつもない数ですよね。これらの中には良いものもあり悪いものがありますが、菌をやっつけろ!という考えで、それを駆逐するような治療をしてしまうと逆に良い菌まで死んでしまいます。病気と闘ってくれる味方まで殺してしまうのは本末転倒です。そこで排除するより、バランスをとって共生してしまおうという発想になるのです。

 

共生の時代へシフト。「マザロジー」という考え方とは

―菌と共生するという発想とは、具体的にはどのようなことですか?

 

「マザロジー」という考え方で、外的な力を加えずにもともと人に備わっている内なる要素で治していこうということです。健康の神は我が内にあり、ですね。哲学のトレンドもそのようにシフトしていってますよ。競争から共生です。教育分野もまさにそうで、今の主流は個性重視のオーダーメイド教育です。医療も同じことで、悪い菌をやっつけるのではなく、無数にある菌同士のバランスをとるために共生菌を入れて体内環境を改善させていきます。

私は遺伝子からさらに発展して腸内フローラに着目していますが、これは人間の中にある細菌の90%が消化器官に生息していると言われているからです。だからそこを知り、整えるといろいろなことが改善されるのですよ。

 

―子供の教育に熱心な母親にお勧めですね。

 

それもそうですが、もっと広く教育現場に届けたいですね。幼児教育の機関だったり発達障害の通所施設であったり、あるいは塾や予備校などです。

 

ワクワクしたことを伝えたい。では、自分をワクワクさせている正体って?

 

―毎日の治療の中で発見があって、伝えたいことがたくさんあって、まさに満を期しての上梓だったのですね。でも実際に本にするにあたっては、相当のエネルギーが必要だったのではないでしょうか。

 

それも全て縁や成り行きですね(笑)今までも何冊か本を出していますが、実はそれほど出版業界には明るくないのですよ。どこにお願いしようか全く考えていなかったです。たまたまある酒席で今回お世話になった本の企画プロデュース会社「スタックアップ」の平田さんと話をしていたら盛り上がり、彼女の人脈やパワーであれよあれよという間に本にしようとなったわけです。スタックアップさんと仕事をするのは初めてでしたが、本当に素晴らしいチームをつくって下さり感謝しています。それこそ最初は、占いの本みたいにカジュアルな内容でいこうという発想だったのですが、進めるうちにどんどん専門的になり濃くなり…。最終的にこのような本になったのですが、編集者やライターさんは大変だったと思います。しかしそこはさすがで、スタックアップさんの確実な人選で、熟練の編集者の方や非常に勉強熱心なライターさんと一緒に仕事することができました。彼ら彼女らの能力は素晴らしく、度重なる変更にも迅速に対応してくれました。

 

―これからこの本がたくさんの方に読まれ、あちこちで良い効果が生まれると良いですね。

 

本当にそう思います。本を出すにあたって「自分がワクワクしたことを、みんなにも広く伝えたい」というのはありがちだと思うのですが、私はさらに「それではなぜ自分はワクワクしているのか。逆に言うと何によってワクワクされているのか、その“わけ”を伝えたい」と思ったわけです。私の思考を支配しているのは何か。ここから先は本書を読んでいただければと思います。

 

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