驚異的な出版マーケティング事例③~「象の背中」

2020年3月25日

本の企画から販売戦略までをトータルプランニングする出版企画・出版総合プロデュース会社のスタックアップです。

 

今回は、当ブログですっかりお馴染みの“スーパー出版プロデューサー”平田静子のマーケティング事例第3弾です!

 

弊社の取締役でもある平田はこれまでに数々のヒット作を生み出してきましたが、その裏には数々の挑戦があり、失敗があり、そしてドラマがありました。今回は彼女が手掛けた「像の背中」について、出版に至るまでの長い道のりをご紹介したいと思います。

 

選ばれる極意。アプローチで他と差別化

 秋元康を知らない人はおそらくいないでしょう。数々のヒット曲を生み出す音楽プロデューサー兼作詞家として、そして昭和世代であればおニャン子クラブの仕掛け人として、平成世代であればAKB48の仕掛け人として知られた、芸能界きってのマルチな才能の持ち主です。

 

平田はフジサンケイグループの傘下にある扶桑社の宣伝部にいたので、秋元氏とはおニャン子クラブの書籍の宣伝を通じて交流がありました。付き合いのあった頃から秋元氏の仕事に多大な関心を寄せていた平田は、何か彼ともっと面白い仕事ができないだろうかと考えていたそうです。しかし次々とヒットを生み出し時代の寵児ともてはやされていた秋元氏には、日常的に方々から仕事の依頼があります。数多あるオファーの中のひとつになってしまっては埋もれてしまう。圧倒的に企画で他と差をつけなくては目にも止めてくれないと思い「秋元さんが今までやってないことを提案してみるのはどうだろう」という発想に行きつきました。

 

新聞小説という新しい試みは本人の好奇心も刺激した

 好奇心旺盛な秋元氏ならば、この「やったことのないこと」というアプローチは効果的なはず。彼にとっても未知の領域で、且つチャレンジしがいのあるもの。それは一体何だろうと考えたときに“小説”という領域を平田は思いつきました。しかもただの小説ではなく新聞小説です。作詞もやられている方なので文章を書くことには抵抗はないはず。そして新聞小説は作家としての知名度や実力がないとできないものなので、これが実現すれば秋元氏にとっても大きな実績になります。

 

平田はさっそく秋元氏を訪ね「新聞小説をやりましょう!」と提案しました。実はこの時、平田はまだどこの新聞社にも話をつけていなかったのですが、まずは秋元氏を口説くことが最初だと思っていたので迷わずに話をしに行ったそうです。そして思った通り秋元氏は「面白そうだね、やろうよ」と快諾してくれました。それからすぐに産経新聞社に企画を上げたら「ぜひお願いします」となり、そこからはトントン拍子で話が進んだそうです。

 

内容の候補は2つあった。より共感を持てる方に決定

 小説を書くにあたって、秋元氏には内容の候補が2つあったそうです。ひとつは中年男性がなぜか突然女性にモテ始めるとう話。もうひとつはガンで余命宣告された中年男が、残された時間で今まで深く関わりのあった人に別れを告げに行き、そして最期を家族と迎えるという話。

 

前者に比べると後者はシリアスで重いテーマですが、こっちの方が読者の共感を得られるのではないか考え、後者に決定しました。ちなみにタイトルの「象の背中」とは秋元氏本人が付けたもので死期を悟りひっそりと群れを離れる像の姿をモチーフにしたそうです。どちらも中年男性が主人公なので、もしかしたら秋元氏にとっても描きやすい人物象だったのかも知れませんね。

 

 映画、漫画、アニメと形をかえて波及

 「象の背中」は連載終了後に単行本となり、5版まで版を重ねるほどのヒット作となりました。その後、映画や漫画、ショートアニメなどにも形を変えて波及していったので、小説以外で「象の背中」を知る人はたくさんいることでしょう。この広がりは秋元氏が意図してなかったにしても、まさに“仕掛け人”としてのイメージを強化することになりました。

 

好奇心だけではなく相手の気持ちになって考えること

平田は本の企画を立てる時に“好奇心”がきっかけになることが多いそうですが「象の背中」は少し違いました。まず「秋元氏と仕事がしたい」と思い、その次に「秋元氏は何に関心を示すのだろう。何をやってみたいのだろう」と相手の気持ちになって考えました。そしてまだやっていないことへの挑戦という発想に行きついたそうです。企画者の独りよがりではなく、相手の気持ちに添い視点を共有して本を創り上げる。そのようなしなやかな姿勢こそが平田のやり方なのかもしれませんね。

 

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平田のマーケティング事例、第3弾はいかがでしたか?秋元康による新聞小説という壮大なプロジェクトがこのように実現されたとは驚きですよね。本の数だけドラマもある。そんな当たり前に気付かされたお話でした。