一流編集者に聞く!売れる本の装丁とは(前編)
こんにちは、スタックアップです。
本日は「ねこ背は治る!」をはじめ、スタックアップのプロデュース本をいくつも出版いただいている今年創立90年を迎える出版社、「自由国民社」の取締役編集局長である竹内尚志さんにお話を伺いました。
竹内さんはこれまで自由国民社にて数々のベストセラー本を手がけ、なんと指名での依頼が絶えない凄腕編集者です。弊社からの企画もいつもご担当いただいている大変お世話になっている方なのです。
本日はそんな異例のヒットメーカーである竹内さんに、「編集」そして「装丁」という工程がどのように本の売上に関わり、また竹内さんご自身がどんなこだわりやスタンスを持っていらっしゃるのかを聞いたインタビューです。
これから出版を検討している方だけでなく、クリエイティブやマーケティングに関わる方にはぜひご覧いただきたい内容となっております。
■デザイン性は無視!?目立たなければ意味がない
インタビュアー(以下イ):よろしくお願いします。さて、本日は出版における装丁という工程について伺いたいのですが、一般の方からすればなかなか聞きなれない言葉だと思います。
装丁とは具体的にどのようなことを指すのでしょうか?
竹内さん:一般的には本のカバーデザイン、帯、本表紙の作成、それからグリッドやフォーマットみたいな本の内部のデザインなど、中身の内容そのものでなく外側を整える工程ですね。
カバーデザインにイラストなどが必要な際は、そのデザインをこちらで決めてプロのデザイナーさんに描いてもらっていますが、他の作業は一貫して自分たちで行っています。
カバーデザインの業者さんへ発注を控えているのは、最初は費用の節約が目的だったのですが、次第に自分たちでやったほうが「本が売れる!」と気が付き、今のスタイルに落ち着きました。
人に頼むというのは、それによってクオリティが上がる、売れる、だからお願いするわけなのですが、自前でもっと売ることができるならわざわざ頼む必要はないだろうという考えからです。というのは結局、編集者は著者さんとの距離が近いので、本の中身やご本人のことをよく理解できるのですが、デザイナーさんはそうはいきません。どちらがより中身を表現できるか、ということです。
イ:では、実際に売れる本を作るために、カバーなどデザインする時はどういった点にこだわっていらっしゃるのでしょうか?
竹内さん:そうですね、私は装丁にあたって何かを“デザインする”という意識を持っていません。私が編集者として行うのは、著者が持っているコンテンツをできる限り強く売り出せるよう、表紙やカバーといったいわば“看板”をかけることだけです。
なるべく書店で目立ち、本の内容を主張できて、読者が表紙という著者の世界への入り口を開いてみたくなるような、そんなカバーにすることを心がけています。
これは、私がプロのデザイナーではなくただの編集者でしかないからこそできる強みなのかもしれません。アート性が高いおしゃれな表紙だから本が売れる、というわけではないのです。
売れる装丁というのは、読者が書店でその本を一目見ただけで興味が湧くような、目立つ商業的なデザインだと、私は考えています。いかにデザインがかっこよくても、読者が書店で本を目にする時間は刹那で一瞬です。目立たなければ意味がありません。
そして編集者がデザインを考えるもう一つの強みは、著者のキャラクターがわかることです。私達は表紙を考える時に、著者のキャラクターがむき出しに伝わるようなデザインを心がけています。これは先程もお話しましたが、何度も実際に著者に会って最初から最後まで本作りに関わる編集者だからこそできることだと思うのです。
■効果音が聞こえる本
イ:“目立つデザイン”とのことですが、具体的にどのようなものを指すのでしょうか?
竹内さん:うん、そうですね…。
私がイメージするのは“音”です。ちょっと伝わりにくいかもしれませんが、少年漫画などを見ていると、攻撃されたときや物が落ちたときに「ドーン!!」という効果音が文字で背面に書かれていますよね。
私はあの効果音が好きで、装丁もそんな風に表紙から「ドーン!!」という音が聞こえてくるようなデザインを作りたいと思っているんです(笑)。昔音楽をやっていたこともあって、音がイメージしやすい。他にも本によっては、「チーン」とか「ヒソヒソヒソ」という音が聞こえてくるものもありますね。
イ:確かに表紙から音が伝わってきそうな本はありますね。その捉え方は参考になります。
他に何か心掛けていることなどがあれば教えていただきたいです。
竹内さん:どんな本でも、私は“清潔感”と少しの“可愛さ”を取り入れるようにしています。実用書などでは特に、手にとってもらうための明るいイメージは大事な要素です。
それからキャッチコピー。これに関しては職業上“死活問題”なので常に考えています。
書店で本を目にするほんの一瞬で興味を持たせるためには、キャッチーな言葉が必須です。
街を歩いている間も面白い看板がないかと無意識のうちに探していますし、この前趣味で落語を見に行った時にも使えるフレーズがないかと探していました。どこにいても常にこのセンサーはONの状態です。
■ターゲティングと見せ方
イ:なるほど。ビジュアルとキャッチコピーで読者の興味を惹くわけですね。加えて“手にとってもらいたい人”のターゲット設定が必要だと思うのですが、装丁においてターゲットの読者を意識することはどれほど大切なのでしょうか?
竹内さん:ああ、それはもう絶対的に大事ですね。
私たちが本を企画する時は、ペルソナといって、年齢や職業、趣味まで想定した具体的なターゲットモデルを設定してマーケティングを行います。そしてこのターゲットの設定は当然、本のハードである装丁にも大きく影響します。
例えば、高齢者の方をターゲットにした健康本であれば、カタカナ語は減らす、文字を大きくする、カバーのデザインも優しめにするなど。
ビジネスマンを狙ったビジネス書であれば、かっちりしたデザインで、言葉使いもビジネス系の言葉を使うなどです。
カバーに使うキーワードもターゲット層の心に響くようなチョイスを意識しています。ここでもデザイン性ではなく、商業性が大事になってきます。この商業的観点から装丁した結果、著者さんの想像を越えて驚くような仕上がりになることもあります。
竹内さん、ありがとうございました!
今回は装丁へのこだわりを伺いました。ここまで赤裸々で、且つ具体的にお話してくださるとは私たちの想像も遥かに越えていました。
後編では、装丁における編集者と著者の関係性についてさらに語っていただきます。
どうぞお楽しみに!
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