「言葉が社内に届いていない」東証一部上場、創業社長が伝えたかったこと
スタックアップです。
7月4日、1冊の本が出版されました。
デジタル時代を生き抜く「エモーショナル経営」
アイビーシー株式会社 代表取締役社長 加藤裕之著
2002年創業、自社開発のネットワーク監視システムを提供するアイビーシー株式会社。IT業界でわずか一代にして東証一部上場を果たした加藤社長初の自著です。
「IT」「東証一部上場」という言葉から連想されるスマートで輝かしい成功ストーリーとは裏腹に、この本に描かれているのは泥臭く人情味に溢れたビジネスの道のりです。
書籍制作にあたり弊社にて企画プロデュースをさせていただきました。出版前の加藤社長に取材した記事前編です。
■社外取締役の会社は伸びる。そして自社は。
インタビュアー(以下、イ):加藤さん、自著の出版おめでとうございます。早速ですが、今回出版に至ったきっかけを教えてください。
加藤さん:この本の元となった原稿を書き始めたのは5年以上前からです。書き始めたきっかけというのは、なんとなく会社が軌道に乗ったけれど成長しなくなったという、安穏とした雰囲気が社内に漂っていたから。
最初は上場を考えておらず、弊社の製品はサブスクリプションモデルでストック型のビジネスのため少人数であれば業績が伸びなくても食べて行くことはできたのです。ワンマン経営をやる気はなかったので人のレベルに合わせて会社を経営しつつ、毎月黒字を出しつつ、利益を社員に還元する会社でした。決算賞与でこれだけ利益を出せば社員に配る、と言うやり方をしていました。
年間で10%成長すれば、人を増やさなければ食べていける。その頃社員は20〜30人程でしたが入れ替わり立ち替わりで人が変わったり、最初は私と仕事をしたいという人だけを採用していたけれど会社の節々に刺激を与えないといけないなと。そこで私の影響がない会社にした方がいいんじゃないかと幹部社員に任せ、私自身は自腹で海外事業を始めたり、他の会社の社外取締役を引き受け技術会社の営業をやるなり様々トライしていたんです。そういう背中を見せつつ幹部を育てようと。しかし私が社外取締役の会社は皆簡単に伸びるのに、振り返ると自分の会社は伸びてはいるものの爆発はしない。社外だと経営指南をするだけで業績が2倍や3倍になるのに、おかしいなと。
自分の会社が伸びないのは「マインドが伝わっていないのか」「楽をさせていたのか」と考え始め、私の考えを20〜30人の会社に伝えられていないのかと思いました。それで何もかもを書いて、私がいない状態でもそれを継承していった方がいいんじゃないかと思ったんです。
■危機的状況で、人が手を差し伸べてくれる「信用」
イ:書いていたのは日記のようなものですか?
加藤さん:ビジョンや理念は2004年くらいに作ったものだったのですが、それをブラッシュアップしたり経営のやり方や考え方を書き始めたんです。時間のある時に。方向性や5年後10年後は世の中がどうなる、だから我々はこうなるべき、ということを書きました。数ある失敗体験を公開して、こんな苦労があったけれどこうして這い上がってきたとか、なぜそんな失敗になったのか、人が辞める時の判断基準は?などを時系列でまとめて。最初は社内ポータルで「IBCヒストリー」という形で発信しようと思っていたんです。
創業1年目から予想打にしない出来事に見舞われ危機的状況になったところから復活できたのは人のおかげで、私と組んでビジネスが上手く行った人達がそういう時に手を差し伸べてくれた。信用力があったから乗り越えられた。その信用を得るための考え方も盛り込んでいるし、一足飛びでこう言う会社になったのではなくて、結局個人的な信用と何かトラブルがあっても逃げない自分がいたり、全てをクローズしてきた実績があったり、さらにそこで新しいマーケットを作った理由があったり。重要なのはマインドセットや、やり方や考え方がちゃんと整っていることです。
そして強烈なインパクトだったのは東日本大震災の時。
社員や親戚は全員無事でした。でも世の中にこういった予期せぬ脅威が起った時、この会社はどうなるんだろうと思ったんです。それなら大企業に買ってもらった方が社員は幸せなのではないかなど、色々と考えました。
その頃辞めていく社員は「社長ともっとコミュニケーションを取りたかった」と言って去っていき、「私の言葉が社内に届いていない」と痛感しました。
イ:加藤さんが書き出していたご自身の経験談は、社内ポータルで発信されていたのですか?
加藤さん:発信しようと思っていたのですが会社の人間関係もあり、上場などステージも変化し、出せなくなってしまったのです。そして書き連ねた文章が赤裸々過ぎて。(笑)
読み物として面白いと思うし残したいという気持ちもあったのでゴルフで一緒になった後尾さんに相談した所、ぜひ読みたいと言ってくださって。このままではなく章ごとにまとめて出そうという話になりました。
今回の本で編集に入っていただいた森川さんは知人の社長対談などのライティングを多く手掛けている方で以前から私の話すことも文章に残していってもらっていたので、もう一度再編集いただき出版する形となりました。
いかがでしたでしょうか。
経営者の皆様、ご自身の考えやビジョンが社内の全員に届いているだろうかと疑問を感じることはありませんか。後編では、この本を読んだ社員の方々から言われた言葉、そして読者の方々への期待を伺いました。
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