東邦出版 中林さんに聞く!読者と築く信頼関係(インタビュー後編)

こんにちはスタックアップです。
 
東邦出版書籍編集部長、中林さんへのインタビュー。
前編では中林さんのご経歴と、「サッカー文化を日本に広めたい」という想いを伺いました。
 
後編では、中林さんに「売れる本」について、ご自身の考えるところを語っていただきます。
 

■サッカー本で「狙って100万部」は無理。でも10万部なら目指せる。


 
インタビュアー(以下イ):率直に聞くのですが、中林さんからみた売れる本とはどのような本でしょうか?
 
中林さん:その質問には悩むところですが…。
そもそも「売れる本」というテーマで、私がインタビューを受けていいのかと社長にも話していたんです。
というのも、基本的に僕の本作りは「『世に出すべき本』をいかにビジネスとして成り立たせるか」という視点で考えています。
ほかの社員をみる視点もそうです。
 
編集部長という肩書を持たせていただきながら 、自分でもジレンマというか、ダメな点だと思っているのですが。
ですので個人的には「売るための本」と考えてスタートした企画がほぼありません。
「売れる」ということに対してどういうアドバイスができるのか、考えてしまいます。
 
実はサッカー本に限っていうと、このジャンルで100万部を狙って出すというのは難しいと考えています。サッカー本で過去に100万部を実現したのは、長谷部誠選手の『心を整える。 勝利をたぐり寄せるための56の習慣』という本。
あれは100万部を超えましたが、担当編集者の話を聞いても狙って出したわけじゃないと。
 
そこには理由があり、本を出した直後に東日本大震災が起こって、読者の心理と本の内容に共通するものが多かったという流れがありました。
そういう予期しない何か、想定しない何かがないと100万部は難しい。
 
反対にサッカー本でも10万部は目指せると考えていて、そこは常に目標にしています。
もう一つ、サッカー本やスポーツ本はシリーズ化がしやすい。シリーズにできれば安定して何回も出版することができます。
数万部を繰り返し100万部を生み出すというのも、スポーツ本としては目指すべき形かなと考えています。
 
イ:シリーズ化というと、いいテーマがあればそのテーマで選手を変えて刊行するなどでしょうか?
 
中林さん:そうですね。東邦出版で出しているものでは「専門講座シリーズ」という本があります。
サッカーのポジションごとに一人の著者に立ってもらって、そのポジションを詳しく分析する。観客もプレイヤーも読めるシリーズです。
読み物系でも、シリーズで出しているのは結構多いです。売るという観点では、シリーズ化できるかどうかは考えています。
 

■この本を多くの人に読んで欲しいという思いがあってこそ。


 
イ:「これを世に広めて行きたい」というテーマありき、ということですね。
そもそも出す意義があるかが大事、という。
中林さん:赤字になってしまってはダメですが、「売れるから出そう」で出版して売れなかった時こそ虚しいことはないですよね。 この企画を外に出したいという思いがあって、出版するべきだと思います。
 
だから、世に出す価値というのを最低限基準として持ちたい。
そしてやるからには必ず多くの人に見てもらいたいというところは、どんな本でも共通しています。
 
イ:中林さんにとって世に出す価値がある本というのは、どんな視点で判断されるんですか?
 
中林さん:やっぱり自分が読みたいもの。 また、出版の話をもらった時に「多くの人に伝えなきゃいけない」と感じるものですかね。

だからより専門性がある人が編集者をやるべきだし、僕がその専門じゃない時は専門の人を間に立てるようにしています。
そのせいで伝えるべきことがぶれたり、ずれてしまったりするのは避けたいので。
 
イ:その本のツボがわかる人ということですね。
例えばサッカー×ビジネスという本の場合、書店のビジネス書コーナーに並ぶのですか?
 
中林さん:こちらとしてはビジネス書の棚に並べたいという思いで動いています。
ただし仕事として最低限の売り上げを出さなくてはいけない。サッカー本コーナーで「最低限これだけは売れる」というのは、経験則も含めて自分の中にあります。
 
それに加えてビジネス書の棚で勝負できるか、毎回試行錯誤です。
 
イ:それは本屋さんが自発的にそのジャンルに置いてくださるのですか?
 
中林さん:書店でご判断いただくこともありますし、こちらがアピールすることもあり、両面ですね。
本にはジャンルコードというのがあるので、出版する際にメッセージとして伝えることはできますし、発売した後にうちの営業が「こちらのコーナーの方が売れます」と書店にご案内することもあります。
 
イ:ジャンルがビジネスに限られるより、売れる目安が立てられる層が柱にあってさらにプラスαというのは強みですね。
 
中林さん:やはりその積み重ねがあって、サッカー本が出ると多くの書店さんで平積みしてくださいます。
そこに「ハズレはない」という信頼を築けている、それは読者からも感じます。逆に東邦出版が「どうなの?」という本を出すことは読者の方々の期待を裏切る行為だと思っていますし、とても意識している部分です。
 

■何年後も変わらず読んでもらえる本を出すことが、信頼になる。


 
イ:書店にとって東邦出版のポジション、イメージというのはどのようなものでしょうか?なぜ信頼が築けたのでしょう? 
 
中林さん:全体として意識して決めているのは、時流に乗っかったり、読み時が数カ月で終わるようなものはやらないということ。
何年経ってもずっと読み続けてもらえるような本を出す。新聞や雑誌とは別のものですから。それが本屋さんや読者の方々との信頼関係になっていると思います。
 
イ:ちなみに、いま中林さんが興味のある本はありますか?
 
中林さん:「サッカーIQが高まる」というシリーズ。一流選手による実際の試合のシチュエーション図をもとに、ゴール前までが描かれていて「では、このあとどうやってゴールに繋がったでしょう?」というのがクイズになっています。
 
サッカー専門の著者さんなのですが、将棋の羽生さんの詰め将棋の本を見ていて、これはサッカーでもできるのではないか、とご提案をいただきました。
 
実際にゴールした実例なので、著者が考えた正解ではありません。
ゴールへの答えは本来いくつでもあるわけですが、このチームのこの選手はこうやって点を決めた!という例ですよね。
最初に大人向けの本が出て、次に子供向け、今また新しい大人版を作っているところです。こういう新しいジャンルは面白いですね。
 
イ:ちなみに、全く個人的な質問ですが…
今までお会いしたサッカー選手で一番圧倒されたのはどなたでしょうか?
 
中林さん:カズさんですね。空気やオーラがちょっと違います。
今年51歳ですよね。去年ちょうど50歳の誕生日のタイミングで本を出させていただいたんです。そしてまだ現役です。
カズさんが身につけているものは全部がカッコ良く見えて、そのあとすぐ買っちゃうんですよね〜。身に着けると「あれ?なんかカズさんと違うな…」ってなるんですけど(笑)。
 

■大事なのは自分の強みを持ち、それが一般に届くかを見極めること。


 
イ:編集者として、本を出したい方に持っておいて欲しいこと、考えて欲しいことはありますか?
 
中林さん:難しいですね…。まずは自分の専門性、ここだけは負けないという強みは必要ですね。さらにもうひとつ付け加えるなら、それが一般の人に響く説得力や熱量を持っているかを見極められたら、ベストかなと。
 
その人が面白いと思うことを、一般の人はどう受け止めるかはまた別問題なので、それを判断するのが編集者の仕事でもあります。
 
そのための視点を持つためにも僕はサッカーの試合観戦時、なるべくプレスパスを使わないよう心掛けています。
例えば試合後の囲み取材などがある場合は別です。またVIP席へ招待いただくこともあり、それは人脈を広げるために貴重な機会なので伺いますが、それ以外ではなるべく自分でチケットを買うようにしています。
 
著者もお金を払わずに見に行けるのですが、パスで入るとお金を出して見に行くお客さんの感覚を忘れてしまいます。お金を出しても面白いと思えるのか、そのために毎週2,000円払えるのか。お客さんと同じ一般的な視点を持つことは、編集者も著者も大事だと思います。
 
 
中林さん、素晴らしいお話をありがとうございました。
 
まず「この本を世に広めたい」という強い思いがあること。
それをビジネスとして成立させるため試行錯誤すること。
そしてお金を払う読者と同じ視点を忘れないこと。
 
中林さんのお話には、本を出版する上で胸に刻んでおきたいアドバイスがいくつもありました。
過去のサッカー関連書籍やその他中林さんの書籍はコチラの東邦出版公式サイトから!
 
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